はじめまして、開発部で電気設計の責任者&設計者(プレイイングマネージャー)をやっています大成と申します。

よろしくお願いいたします。

 

電気のエンジニアにとって絶対に切り離すことができないノイズ。

音で言うなら、聞きたい音以外のお邪魔な音を雑音っていうのと同じですね。

 

雑音で聞き間違えたり、言いたいことが正しく伝わらなかったりする様に、電気の世界でもノイズによって、正しく動作しないことがあります。

なので、我々電気担当はノイズを注意深く扱います。

 

前置きはこれくらいにしておいて、

今回私が紹介するのは、電子マネーチャージ機「AES-EMC」の開発秘話でございます。

 

 

大成さん画像1

 

「電子マネーチャージ機シリーズ」のご紹介

 

 

ある日の出来事・・・

 

担当A:制御基板が通信できません、バグってます!

私:んが、なぜ?

担当A:通信ICが誤動作して正しく動いていません!

私:うお、なぜ?

担当A:通信ICを動かすクロックが小さくて電圧が足りません!

私達:おえ、マジか?!

(当時は専門用語と怒号が飛び交っていたと思うので、かなりマイルドに再現しています・・・)

 

 

大成さん画像2

  *AP-2293D:AES-EMCの制御基板

「当時の勉強会の資料 通信って何?」より

 

 

通信ICが誤動作するってどういうこと?

 

ICの中には、正確に時の間隔を刻む基準信号(それをクロックと呼んでいる)が必要になる場合があります。

この基準が乱れると、そのICの動きも同じ様に乱れます。そうすると周りとタイミングが合わなくなり、やることにズレが発生します。

これが誤動作するというやつですね。

 

 

大成さん画像3

 

「当時の勉強会の資料 UARTという部分が誤動作しています」より

 

 

なぜクロックが歪んだの?

 

別件の開発で、ノイズ対策に効果があったので、その成功例を取り込みました。

しかし、別件の成功例とは回路条件が異なるため、ノイズだけでなくクロックにも作用し、クロックが小さくなりました。

 

 

大成さん画像4

 

C1の波が減衰してC2の様に小さくなっている

 

 

なぜ設計で見抜けなかったの?

 

担当A:前回ノイズに効いたから、今回もノイズ対策に入れておこう・・・

ノイズ対策に成功した経験が全面にでたため、回路条件の検討・設計が疎かになりました。

そして、

承認者(私):小さいフィルタで問題ないだろう、問題あれば未実装に変更で・・・

回路条件を確認せず設計工程を通過させています。

(弊害を見落としていますね。)

 

 

なぜデバッグで見抜けなかったの?

 

成功例を流用したので設計しておらず、正常で当たり前と検証ポイントに挙げていなかったのです。

(良い結果が得られると思い込んでいます。)

 

 

なぜ試作で見抜けなかったの?

 

試作は動いていた。

これもたまにあることで、試作ロットでは個体差の組み合わせでたまたま正常に動き、合格を出す場合があります。

(皆さん試作台数ってどうやって決めているのでしょう?)

 

 

なぜ量産早期に見抜けなかったの?

 

この部分がオプションということもあり、検査に含まない機能で発見が遅れました。

(そもそも、そこも問題なのですが・・・)

 

 

ふり返ってみると・・・

 

障害は1つのミスでは実害に到達しないと言いますが、その通りだと実感しました。

決して安くはない改修費用と工数が発生しましたが、こういう経験を経て安定したハードウェアを設計する部隊として、我々は今日も成長しています。

 

ここまで読んでいただきありがとうございました。

今後も私たち暁電機製作所のエンジニアは、製品の品質向上に前向きに取り組んでまいります。

 

執筆者
大成哲也
トランジスタ?ナニソレ? オシロスコープ?自分には似合わない、ムリ・・・ という時代もありましたが、今は電気設計グループを率いて突っ走っています。 自称なんちゃって日曜プログラマー!