ARUNASエンジニア奮闘記にお立ち寄り頂き誠にありがとうございます。

 

6年ほど前に発生した事象についてご紹介します。

スーパーマーケットなどによく置かれているセルフレジでのお話です。

従業員さんが正面扉を開けてメンテナンスをおこない、終了後に扉を閉めて鍵をかけたら…

あれ?鍵が抜けなくなっちゃった!なぜ?なぜ?なーぜ?

 

*セルフレジ/セミセルフレジ/券売機ソリューションのご紹介


 

 

<原因調査>

 

調査の結果、鍵シリンダーの軸とロック金具の穴との誤差(クリアランス)の片寄りにより通常位置より上下方向に±2.8mm動いてしまうことがわかりました。

 

海野さん画像1

 

設計時は、クリアラスが均等な状態のみでしか確認しておらず、片寄った状態については考慮していませんでした。

 

 

【通常位置(出荷状態)】

通常位置では、クリアランスが均等でロック金具は水平であり、本体引っ掛け金具にしっかりと掛かっている状態です。

 

 

海野さん画像2

 

 

【ロック金具が下に向いた状態】 

下の図のようにクリアランスが片寄った場合は、ロック金具が下に向いた状態となります。

今回採用した鍵はシリンダーの軸が90度回転すると抜ける仕様でしたが、この状態だと90度回転する前にロック金具が本体側の引っ掛け金具に当たってしまい、鍵が抜ける位置まで鍵シリンダーの軸が回転できなく、鍵が抜けなくなっていました。

 

 

海野さん画像3

 

【ロック金具が上を向いた状態】

また下の図のようにクリアランスが片寄った場合は、ロック金具が上を向いた状態になります。

この状態だと鍵が抜ける位置まで鍵シリンダーの軸は回転できますが、ロック金具と本体引っ掛け金具とのロック状態が甘くなり、扉が開いてしまう可能性があり、別の問題が発生することも分かりました。

 

 

海野さん画像4

 

 

更に今回の不具合を検証する過程で、正面扉が開いた状態でロック金具をロック方向に回すと正面扉から飛び出た状態となり、この状態でロック金具に対して下方向の力が加わるとクリアランスに片寄りが生じ、先程紹介した“ロック金具が下に向いた状態”になってしまうことが分かりました。

これにより扉が開いた状態では扉が閉まらなくなり、扉を閉める事が出来たとしても鍵が抜けない状態になってしまうことが分かりました。

 

 

海野さん画像5

 

 

<処置内容>

 

上記の処置としてロック金具が上下どちらに向いてしまってもロックに影響しないような構造を検討しました。

まずはロック金具の引っ掛かり部をR形状とし、本体引っ掛け金具側も板金の端面からボスに引っ掛かる構造としました。

ロック金具が下に向いた状態では鍵シリンダーの軸は90度回転でき鍵が抜ける位置で設計し、且つロック金具が上を向いた状態でもロックが甘くならない形状に変更しました。

また、ロック金具におもりを追加することで正面扉が開いた状態でロック金具をロック方向に回しても正面扉から飛び出た状態とはならず、自動的に正面扉の中に収納される設計に変更しました。

 

 

海野さん画像6

 

 

<対策結果>

 

改善したロック金具及び本体引っ掛け金具にて、扉の開閉試験をおこないました。

・耐久試験回数の算出

 (1日5回の開閉操作、365日、5年(保守期間)の9125回以上として1万回を実施)

・100回に一度鍵の抜き取りができる事を確認

・検証前と検証後で以下を確認

  •  ①ロック金具受けの軸の摩耗具合
  •  ②前扉と筐体の隙間(側面鍵部)
  •  ③前扉と筐体の隙間(左上部)

 

試験結果:上記試験内容の結果、問題は発生しませんでした。

 

 

<再発防止>

 

今回のようなロック金具を引っ掛ける構造の場合は、鍵シリンダー及びロック金具の取付けによる誤差(クリアランス)の片寄りを十分考慮して設計及び検証をおこないます。

 

 

最後までお読み頂きありがとうございました。

今後もARUNASエンジニアは、製品の品質向上に取り組み、皆様に喜んで頂けるよう努力していきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

執筆者
海野全宏
今年60歳(還暦)を迎え定年退職となりましたが、ブルーム社員として働かせて頂いております。 製品のデザイン・機構設計を担当しております。 中学生と小学生の女子にバスケットボールを教えて16年そろそろ引退したいと思っております。